最終契約書のポイント
基礎知識コラム最終契約書はDA(Definitive Agreement)とも呼ばれ、M&A交渉の最終段階において売手と買手の間で締結される契約書を指します。LOI(基本合意書)が中間的な合意を約束する書面であるのに対して、DAは交渉により最終的に合意した内容を約束する文字通り最終契約書となります。最終契約書には、「取引の基本条件」「表明保証」「誓約」「クロージング実行の前提条件」「補償」等が記載されます。
最終契約書の名前は、その契約内容によって異なります。M&Aには多種多様なストラクチャー(手法)とスキーム(仕組み)があり、最終的な契約の内容もそれぞれ異なります。契約書の名前はそれぞれの契約内容に応じて付けられることとなります(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書など)。
このコラムでは、医業承継における最終契約書の種類や、どの様な事項が規定されるのかについてお伝えします。
最終契約書の種類と記載事項
医業承継での最終契約書は大きく2つに分けることができます。1つは医療法人譲渡時のもの、もう1つは事業譲渡(個人開設医院や分院の譲渡)時のものになります。
(1)医療法人譲渡時の契約書
医療法人の承継は、一般的には出資持分又は拠出金債権の譲渡と経営陣の交代で行われます。そのため、最終契約書は、出資持分・拠出金債権を譲渡するための契約書と、経営陣を交代して経営権を引き継ぐための契約書の2種類となります。
なお、多くはありませんが出資持分を譲渡せずに入れ替える方式の譲渡があり、その場合は経営陣交代の契約書にその旨を付け加えて最終契約書とします。
①出資持分譲渡契約書・拠出金債権譲渡契約書
一般的な医療法人は、出資持分ありか出資持分なしの形態となっています。
出資持分とは株式会社でいうところの株に相当するものですので、出資持分ありの承継ではこの出資持分を売手が買手に譲ることが必要で、「出資持分払戻債権譲渡契約書」といった名前の契約書が締結されます。
出資持分なしの承継では、拠出金の返還請求権を譲渡することになり、「拠出金返還請求債権譲渡契約書」が締結されます。
これらの契約書には、以下の様な条文が記載されます。
・譲渡対象:法人名、出資持分・拠出金の内容など
・譲渡条件:譲渡の時期・譲渡対価の価額・対価の支払方法など
・表明保証:売手が全ての出資持分や拠出金を保有していること、譲渡を医療法人が承認していることの表明保証など
・前提条件:経営陣交代の手続きなどが円滑に履行されていることなど
②経営引継契約書
医療法人を引き継ぐためには、出資持分の譲渡だけではなく、売手側から買手側へと経営陣(社員・役員)を交代する必要があります。そのための手順などを定めるために、「経営引継契約書」が締結されます。名前は様々で、単に「覚書」という場合もあります。また、①に合わせて記載して契約書を1種類とするような場合もあります。
この契約書には、以下の様な条文が記載されます。
・引継条件:引継の時期や内容など
・引継方法:引継の手順や方法など
・表明保証:現在の経営陣、現経営陣の引継への承諾、適正な法人運営など
・前提条件:出資持分など譲渡の契約が履行されていることなど
(2)事業譲渡(個人開設医院や分院の譲渡)時の契約書
個人医院や分院の譲渡は、一般的には事業(固定資産及び営業権)の譲渡により行われます。そのため、最終契約書は、事業譲渡契約書の1種類となります。
なお、既に廃止している医院の資産のみを譲渡する場合は、資産内容に応じて作成された資産譲渡契約書が最終契約書となります。
①事業譲渡契約書
個人開設医院や分院の譲渡では、医療法人譲渡のように経営母体である組織ごと譲渡するわけではありません。医院事業を運営するために必要な資産や権利だけが譲渡されます。
最終契約書である事業譲渡契約書の記載内容は、主に資産や権利の内容、譲渡条件など以下の様な条文が記載されます。
・譲渡対象:譲渡の対象となる資産(カルテ含む)や権利など
・引継方法:引継の手順や方法など
・表明保証:固定資産に関する瑕疵担保など
・前提条件:買手による賃貸借契約の締結など権利の移行が履行されていることなど
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<最終契約書(出資持分払戻請求権譲渡契約書)イメージ>
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