クリニックにおける “ボトムアップ” を取り入れた経営のすすめ
お役立ちコラムクリニックは小規模であるがゆえに、意思決定のスピードが求められる一方、スタッフ1人ひとりの影響力も大きい組織です。そのため、「トップダウン」と「ボトムアップ」をどう組み合わせるかが、経営の安定性と成長性を左右します。
1. トップダウンだけでは限界がある
医療機関では、院長のリーダーシップが強く求められる場面が多くあります。特に以下のようなケースでは、トップダウンが有効です。
-
方針転換や設備投資など、大きな意思決定
-
危機時の迅速な判断
-
医療安全やコンプライアンス対応
しかし一方で、トップダウンに依存しすぎると次のような“副作用”が現れます。
-
スタッフが指示待ちになり主体性が育たない
-
現場の微妙な変化がトップに報告されにくくなる
-
組織の学習スピードが落ちる
-
マネージャー層が育たず、院長の負荷が増大する
特にクリニックは、日々のオペレーションの質が患者満足度を左右するため、“現場の知恵”が欠かせません。トップだけで全てを握る経営は、長期的には非効率です。
2. ボトムアップ式は、クリニックにもフィットする経営手法
クリニックは、実は「ボトムアップ」が機能しやすい事業・組織構造と言えます。
-
医療事務・看護師・受付・リハスタッフなど、現場に最も近い人が課題を把握している
-
患者からの声を直接受け取っているのは現場スタッフ
-
クリニックの価値は「現場の対応品質」で決まる
そのため、ボトムアップを仕組みとして組み込むと、下記のような変化が起こります。
-
スタッフの主体性が育ち、オペレーションが自然と改善される
-
“自分ごと化”が進み、やらされ感がなくなることで離職率が下がる
-
患者満足度が上がり、紹介患者が増える
-
組織全体が学習し、改善力(組織の筋力)が高まる
院長が“看板”として牽引する経営と非常に相性が良いのです。「強い中小組織」の定石でもあります。
3. ハイブリッド経営が生む“再現性”と“強さ”
最適解は、「トップダウンとボトムアップを明確に使い分ける」ことです。
● トップダウンが効果を発揮する領域
-
経営方針・理念
-
投資判断(設備、採用、診療科の拡大)
-
医療安全・法令遵守
-
中長期の戦略テーマ設定
● ボトムアップが効果を生む領域
-
日々のオペレーション改善
-
患者体験の改善(導線・案内・接遇など)
-
業務効率化(残業削減、待ち時間短縮)
-
職種間連携の強化
-
小さな“気づき”の蓄積
経営者が方向性を示し、現場が改善アイデアを生む。この循環が回り始めると、クリニック経営に“再現性”が生まれます。
4. すぐに導入できる「ボトムアップ仕組み化」アイデア
クリニックで取り入れやすい具体策は次の通りです。
① 各部門トップによる月例ミーティング
-
事務長、看護師リーダー、受付リーダー等が参加
-
KPI(外来数、電話対応、在庫、クレームなど)を報告
-
改善案は現場主体で提示
-
院長は“決裁と方向づけ”に集中する
② 問題発生時の「トップ-現場」対話
危機時に院長が現場の声を直接聞くと、改善案の質が大きく上がります。
-
院長が先入観なく意見を受ける
-
現場が本音を出しやすくなる
-
メンバーの主体性を引き出す
トップが現場に降りていくこと自体が、強力なメッセージになります。
③ 小さな提案制度・月1アイデア会議
-
「1人1案」をルール化
-
実現した案を必ず全体へフィードバックする
-
院長が称賛し、文化にする
④ 5分の“ミニ朝会”で改善サイクルを作る
-
昨日の改善
-
今日の課題
-
1つの成功体験共有
これだけで組織の空気が変わります。
5. トップダウン×ボトムアップが育てる“強い組織文化”
クリニックにおいて、最も重要な資産は「人」です。
スタッフが主体性を持ち、患者と向き合い、医療を支える組織をつくるには、トップダウンだけでも、ボトムアップだけでも成立しません。両者を組み合わせた経営は、次のような“強さ”を生みます。
-
変化に対応できる柔軟性
-
日々改善が積み重なる仕組み
-
患者に愛される接遇・導線づくり
-
院長の孤独を軽減し、健全な権限移譲が進む
-
クリニックが“自走する組織”へ進化する
これは、規模が小さいクリニックだからこそ実現できる強みでもあります。
ケアネット医業承継チーム
ケアネットの医業承継チームは、業界経験が長いベテランアドバイザーを中心に、 税務や法務について豊富な専門知識を有する専門コンサルタント、幅広いサポート体制をもつサポートメンバーで構成されております。 専門性の高いメンバーが複数人で関わるチーム制を採用することで、お客様にご満足いただけるサポートや運用体制をご用意しております。 診療所の医業承継に特化をした、全国でも数少ない医業承継チームのノウハウで、開業医の先生方の『後継者問題』の解決に寄与できるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。
