郊外×スモールスタートという新潮流 ― 変化の時代に“持続する開業”を選ぶ ―
お役立ちコラム■ 「郊外志向」が高まる背景
近年、クリニックの開業立地に変化が見られます。
従来は「都心・駅近」が安定の代名詞でしたが、
近年は郊外での開業を検討する医師が増えている傾向があります。
LIFULL HOME’Sが発表した「買って住みたい街ランキング2025年」によると、
上位には勝どき(東京都)や大宮(埼玉県)、八王子、湯河原、大網など、
都心アクセスを保ちながらも生活環境が整った郊外エリアが多くランクインしています。
これは、住宅購入層――すなわち将来的な患者層――が
“都心から半径30 km圏の郊外”へ移動していることを示していると考えられます。
さらに、インフレによる家賃上昇が都心部で進む中、
診療報酬が固定されているクリニック経営では、
固定費の高い都心立地は利益圧迫リスクが増す可能性があります。
郊外では、広い敷地・駐車場付き物件を確保しやすく、
人件費・テナント費も抑えられるため、
長期的な経営安定性を確保しやすい環境といえます。
■ 「スモールスタート型」への関心が高まる理由
もう一つの潮流が、スモールスタート型開業の増加です。
医業承継の現場でも、かつての“年商億単位の医院”ではなく、
コンパクトな医院を引き継ぐケースが増えています。
その背景には、以下のような要因があると見られます。
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初期投資を抑えやすい:
小規模開業は内装・医療機器費が少なく、金融機関からの借入額も現実的。 -
事業リスクを分散できる:
大規模なスタッフ構成や固定費を抱えず、柔軟な経営判断が可能。 -
構造転換に対応しやすい:
診療報酬改定やDX化など環境変化に対して、機動的に舵を切りやすい。
特に「承継+スモール」の組み合わせは、
新規開業よりも初期投資を抑え、既存患者基盤を引き継げる点で注目されています。
■ 郊外×スモール型が持つ“時代適応力”
医療経営は今、大きな転換点を迎えています。
2026年度の診療報酬改定方針では、
効率化・連携・DX推進などが明確に打ち出されており、
事業構造を柔軟に変化させられる体制づくりが重要になる見通しです。
その点、郊外×スモール型の医院は、
変化に対応しやすく、リスクを最小化できる開業モデルとして有望です。
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郊外:固定費が低く、患者層が安定しやすい
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スモール:意思決定が早く、方向転換が容易
この組み合わせは、外部環境の変化が激しい時代において、
「続けやすい医療」を実現する選択肢になり得ます。
■ これからの開業は“持続性”をどう設計するか
今後の開業は、「規模」や「場所」だけでなく、
持続可能な経営をどうデザインするかが問われます。
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規模を抑えた初期投資で始める
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成長に合わせて段階的に拡張する
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DX・在宅・自由診療などを柔軟に取り入れる
こうした“スモール&アジャイル”な経営こそが、
医療の質と経営の安定を両立させる鍵になるでしょう。
■ まとめ:拡大よりも「適応」を選ぶ時代へ
かつての「都心一等地・大型開業」から、
今は「郊外・スモール・柔軟運営」へと価値基準が移りつつあります。
変化を前提にした経営を選ぶこと――
それが、これからのクリニック開業や医業承継における
“持続可能な医療経営”の第一歩といえるのではないでしょうか。
ケアネット医業承継チーム
ケアネットの医業承継チームは、業界経験が長いベテランアドバイザーを中心に、 税務や法務について豊富な専門知識を有する専門コンサルタント、幅広いサポート体制をもつサポートメンバーで構成されております。 専門性の高いメンバーが複数人で関わるチーム制を採用することで、お客様にご満足いただけるサポートや運用体制をご用意しております。 診療所の医業承継に特化をした、全国でも数少ない医業承継チームのノウハウで、開業医の先生方の『後継者問題』の解決に寄与できるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。
