医業承継のその先へ―へき地医療が描く“第二の現役”―
お役立ちコラム■ 医業承継はゴールではなく、次の出発点
医院の経営を承継し、長年の責任から解放された瞬間。
多くの医師が「もう少し現場に関わりたい」と感じます。
体力や責任のバランスを調整しながら、“第二の現役”を歩む。
その選択肢として、いま「へき地医療」に目を向ける先生が増えています。
へき地医療というと、かつては「人手が足りない場所を支える苦労の多い仕事」という印象が強いものでした。
しかし今、そのイメージが変わりつつあります。
そこには、新しい医療の可能性が芽生えています。
■ 日本の人口減少が示す“再分配”のチャンス
日本はこれから段階的に人口が減少し、都市と地方の医療格差がますます拡大します。
特に高齢化が先行する地方では、医療の担い手不足が深刻化しています。
一方で、デジタル化や遠隔医療、地域包括ケアの進展によって、
「ひとりの医師が広域に関わる」ことが現実的になりました。
つまり今のへき地医療は、“不便な医療”ではなく、“進化する医療の最前線”になりつつあるのです。
ここには、経験豊富な医師だからこそ発揮できる知見と、人間力が求められています。
■ ベテラン医師が果たせる3つの役割
① 地域医療の“支え手”として
都市部で培った診療技術やチーム医療の経験は、地方医療の底上げに直結します。
地域の若手医師や看護師にとって、ベテラン医師の存在は“臨床の教科書”でもあります。
たとえ週に数日の診療でも、継続的なサポートは地域の安心に変わります。
② 若手医師の“育て手”として
地方では、医師の育成機会が限られています。
そこに指導的立場で関わることは、後進育成という第二の使命を果たすことになります。
大学や大病院の枠を超え、地域を実践のフィールドとする教育活動が求められています。
③ 医療の“変革者”として
ICTを活用した遠隔診療、AIトリアージ、VRゴーグル活用など、
へき地だからこそ試みやすい実験的な医療モデルもあります。
「制約が多い=自由度が高い」環境で、未来の医療の原型を創ることができるのです。
■ 「へき地」は、次のトレンドを生む舞台
都市部では分業と効率化が進む一方で、へき地では医師が“幅広く医療”に関わります。
診療、教育、地域連携、そして患者の生活支援まで。
この総合的な経験こそが、これからの医療人材に必要な力です。
また、地方自治体や企業との連携により、
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デジタル診療所の実証実験
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医療×介護×福祉の一体モデル
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ドローン配送などの医療物流改革
といった新しいトレンドが“へき地発”で生まれる事例も増えています。
つまり、へき地医療は「支援される側」ではなく、
未来を生み出す拠点へと変わりつつあるのです。
■ 「経験×地域」から生まれる新しい医師像
へき地医療で活躍する医師の多くは、
「もう一度、医療の原点に戻れた」と語ります。
患者一人ひとりと深く関わり、地域の生活を支える。
医療技術よりも“人としての温度”が求められる現場。
そこでは、都市医療では得難い充実感と手応えが待っています。
高齢の医師にとって、へき地医療は「余生の仕事」ではありません。
むしろ、医師としてのキャリアの再定義と言えるかもしれません。
経営から解放され、責任を調整しながら、
“医師として生きる”ことに集中できる環境に身を置ける可能性があります。
■ おわりに:へき地から、未来の医療が始まる
医業承継を終えた先生方が次に向かうべき場所の一つとして、
“過去の延長”ではなく“新しい可能性の現場”を検討されても良いかもしれません。
へき地医療には、医師人生の集大成を社会に還元する意味があります。
そして同時に、次の世代が学び、未来の医療を育てる舞台にもなります。
2040年、日本の医療の形は今とは大きく違っている可能性が高いです。
経験を未来へ——。
その第一歩が、静かな山あいの診療所から始まるのかもしれません。
ケアネット医業承継チーム
ケアネットの医業承継チームは、業界経験が長いベテランアドバイザーを中心に、 税務や法務について豊富な専門知識を有する専門コンサルタント、幅広いサポート体制をもつサポートメンバーで構成されております。 専門性の高いメンバーが複数人で関わるチーム制を採用することで、お客様にご満足いただけるサポートや運用体制をご用意しております。 診療所の医業承継に特化をした、全国でも数少ない医業承継チームのノウハウで、開業医の先生方の『後継者問題』の解決に寄与できるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。
