医業承継の本質は、未来の「時間」と「心のゆとり」の設計 ―経営の終わりではなく、人生の再デザイン―
お役立ちコラム■ 体力の限界が見えたとき、考えるべきは“経営”ではなく“時間”
医業承継を考え始める開業医の多くは、体力の限界をきっかけにしています。
診療への意欲はあっても、「以前のような診療時間では体が持たない」「夜間対応や在宅訪問がしんどくなってきた」といった現実が、最初のサインです。
しかし、ここで重要なのは「どこまで働けるか」ではなく、
“これからの時間をどう設計するか”という視点です。
診療時間を調整し、非常勤や管理医として関わりを続ける。
空いた時間を、自分の「やりたいこと」にあてていく。
それが、医業承継の第一歩なのです。
■ “二つの時間”をどう設計するか
医業承継における時間設計には、二つの意味があります。
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体力面を考慮した時間(診療時間)
― 無理をせず、健康状態に合わせた診療スタイルへ移行する。
たとえば、週4日勤務を週2〜3日に減らす、自院で非常勤として継続する、在宅中心に切り替えるなど。
「完全にやめる」のではなく、「無理をしない」ことが大切です。 -
自由時間の設計(余暇・家庭・趣味)
― “診療以外”に何をしたいかを明確にする。
旅行・趣味・家族との時間・地域活動など、「やりたいこと」を先に定めてから働き方を逆算するのが理想です。
この二つの時間をどうバランスさせるかが、承継後の幸福度を左右します。
医業承継とは、未来の時間の再配分を行う行為だと捉えると、本質が見えてきます。
■ 「心のゆとり」を設計するという発想
承継に踏み出す際、多くの先生が見落としがちなのが“心のゆとり”の設計です。
それは次の二つの観点で定義できます。
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経済的なゆとり:老後資金と退職金の見通し
医業承継によって、退職金や譲渡収入などが得られます。
これを“老後の安心”にどう変えるか。
税負担・譲渡価格・年金とのバランスを専門家と確認し、「経済的ゆとり」を具体的な数値で把握することが心の安定につながります。 -
責任の範囲を狭めるゆとり:ストレスの減少
経営者の立場から非常勤医・顧問医へ移行すると、日々の意思決定や人事・会計のプレッシャーから解放されます。
これにより、精神的な“心のゆとり”が生まれます。
承継は、単なる「経営のバトンタッチ」ではなく、責任を段階的に減らしていくプロセスでもあるのです。
■ 医業承継とは、未来の“時間と心のポートフォリオ”を組み直すこと
「まだ元気だから、もう少し頑張る」
「患者さんのためにやめられない」
多くの開業医がそう感じています。
しかし、承継とは“引退”ではなく、
これからの人生の配分を決め直す機会です。
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仕事に割く時間
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家族や趣味にあてる時間
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経済的な安心感
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責任とストレスの度合い
これらを"再配分(リ・デザイン)"する行為こそが、医業承継の本質です。
医院の未来を託すだけでなく、自分自身の未来を設計する——
それが本来の医業承継の姿です。
■ おわりに
承継を考えるとき、最初に浮かぶのは「後継者がいるか」「どのように譲るか」という実務面です。
しかし、その前に必要なのは、「自分はこれからの時間をどう生きたいか」「どんな心の状態で過ごしたいか」という問いです。
医業承継とは、“経営の出口”ではなく、“人生の入口”。
時間と心のゆとりを設計する——
それが、真の意味での「医業承継」ではないでしょうか。
ケアネット医業承継チーム
ケアネットの医業承継チームは、業界経験が長いベテランアドバイザーを中心に、 税務や法務について豊富な専門知識を有する専門コンサルタント、幅広いサポート体制をもつサポートメンバーで構成されております。 専門性の高いメンバーが複数人で関わるチーム制を採用することで、お客様にご満足いただけるサポートや運用体制をご用意しております。 診療所の医業承継に特化をした、全国でも数少ない医業承継チームのノウハウで、開業医の先生方の『後継者問題』の解決に寄与できるよう、誠心誠意サポートさせていただきます。
